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ガラクタ都市計画:ユーラリール開発

コールハース、ジャン・ヌーベル、ポルザンパルク、建設中、リール

Euralille,Rem kookhaas,Jean Nouvel,Portzamparc

リールヨーロッパ駅からユーラリールセンターを見る。目を細めてみると郊外の団地と変わらない風景であることにきづく。

“かたち”で建物の本質が変わるわけではない。

模型が単に拡大しただけの街。人々は建築と建築の間に残された広大な空間をひたすら歩かなくてはならない。ここでは、“都市空間”とは単に建築を引き立たせるための“隙間”のことなのだ。

ユーラリールセンター内部。ショッピングセンターとしては頑張っていると思うが・・・。

リールヨーロッバ駅内部。これなら19世紀末期の駅舎の方がよっぽど美しく、空間的にも迫力がある。

 ユーラリール開発は英仏トンネルの開通に伴い新設されたTGVのリールヨーロッパ駅周辺の開発である。既存のリールフランドル駅にも隣接し、まさにリールの新しい中心をなすエリアである。

 全体計画をレム・コールハースが担当し、個々の建物は異なる建築家が担当している。コングレスポ(会議展示場)をコールハース、ユーラリールセンター(商業施設、ホテル、集合住宅)をジャン・ヌーベル、リヨン・クレジットタワー(オフィスビル)をクリスチャン・ド・ポルザンパルク、リールヨーロッパ駅をジャン・マリー・デュティルールがそれぞれ担当している。

 ここまでの規模になるとこれは一つの都市である。しかし、ここには建築の羅列があるだけでアーバニティーというものはない。既存の都市のように語り尽くせぬ豊かさというものはここにはみじんもない。カタログ的な説明だけで十分事足りてしまう。実際に歩いてみても、空間と呼べるものはほどんどなく、万博会場を歩くのと変わらない。パビリオンA、パビリオンBを順繰りにめぐってはい終わり。ただひたすら、記号としての施設の羅列があるのみである。

 ここには、近代の限界と貧しさの全てが露呈されている。コールハース本人は全くそのつもりではないかもしれないが、この計画は近代都市計画そのものである。いくら形を操作していても、ことがらを流通可能な記号という形態に置き換え、ある原理のもとに再配置しているだけだから、まさに近代都市計画そのものなのだ。その辺の住宅団地となんら変わりはない。

 もちろん、モダニズムの思想そのものが否定されるべきことなのではない。モダニズムの思想の悪い面しか見えないことが問題なのだ。記号読解ゲームが終わるとこの街には用はない。ことがらとことがらの関係性が極めて貧弱なので、長くとどまっていようという気すら起こらない。重要なのは、記号として現れてくる“かたち”ではなく、構造的に見た空間のあり方なんだけど、その点については、なんら新鮮な提案はない。この街のアーバンデザイン(そんなものがあればの話だが)はコンペを勝利するためだけに機能したようである。

 別に僕は既存都市ばかりを賛美したいわけではない。今の時代に合った新しい都市のタイプというものは模索し続けてしかるべきだと思う。でも、少なくとも都市とは建築展示場のことではない。こういうのをあるいは“逃走する建築”“逃走する都市”として賛美する人はいるだろう。そう、模型やドローイングやビデオだったら良かったのだ。建てるとかえってつまらない。建築の情報化というカッコイイコピーとは裏腹に愚鈍で退屈な実態としての建築の姿ばかりが目についてしまうからだ。

 単純に大きさの意味というものをどのように捉えているのかがわからない。アイディアやイメージが空間に置き換わる際にディメンジョンというものが量的にも質的にも変わらざるを得ないことへの回答は?模型やドローイングをパッと見るのと、それこそ何百メートルも歩いて建物の中に入ったり出たり(あるいは過ごしたり)する体験が同じだというのなら、それこそ建築家は不要である。しかし、人間は高速度で移動も出来ないし、紙のような薄っぺらい存在でもない。身長約1.7m。歩行速度約4m/毎秒。この事実を変えられるのは、神しかいないのだ。

 TGVのリールヨーロッパ駅ははっきりいってひどい。その上に建っているリヨン・クレジットタワーは見た瞬間こそ駅の上に建つ意外性と重力に逆らった形態に引かれるが、見飽きてしまうと、ただの変な建物に過ぎない。こんな広い敷地があるのにわざわざ駅の上に建てている意味がわからない。ユーラ・リールセンターはこの中では一番まともでそれなりに考えて作ってあるが、せっかくの工夫を凝らした造形も全体のおおざっぱな空間の中に見事に消し飛んでしまっている。コングレスポは・・・なんと見るのを忘れてしまった。あまりにがっかりしたので、帰りのTGVに乗り込んだ後、コングレスポを見てないことに気がついたがもう後の祭りである。

 でも、仮にコングレスポが建物として面白かったしても、それによってユーラリール開発全体の評価が上昇するわけではないだろう。建築とアーバンデザインはある程度関係はしているが、基本的には別物だからだ。どうすれば現代の都市が豊かになるかということに関していえば、僕らは極めて貧困な状況しか持ち得てなく、ノウハウもない。それが悲劇である。

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